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妖怪について・5 八岐大蛇

 もとは神であったと考えられますが、主にRPGの中ボス(あくまで中ボス)として名前を知られるようになった気がします。
 なお、大和朝廷に反抗した「まつろわぬ民」は他にも妖怪とされているものがいくつかいます(悪路王、土蜘蛛など)。

ヤマタノヲロチ
 高天原を追放され、出雲の地へ降り立ったスサノヲは、アシナヅチ・テナヅチという夫婦に出会います。その夫婦が嘆いているので理由を尋ねると、毎年1人ずつ娘をヤマタノヲロチに捧げていて、今年末娘(クシナダヒメ)を差し出さなければいけないので泣いているというのです。スサノヲは、ヤマタノヲロチを退治するので、クシナダヒメを娶らせるよう申し出ます。
 ヤマタノヲロチの姿は「彼(その)目ハ赤加賀智(※1)ノ如クシテ、身一ツニ八頭八尾有リ。亦其身ニ蘿(ひかげ)ト檜・椙(すぎ)生ヒ、其長(たけ)ハ谿(たに)八谷・峡(を)八尾ニ度(わた)リテ、其腹ヲ見レバ悉(ことごと)常ニ血爛有リ」(記)、「頭尾各八岐有り。眼は赤酸醤(あかかがち※1)の如し。松柏、背上(そびら)に生ひて、八丘八谷の間に蔓延(はひわた)れり。」とあります。
 ヲロチのヲは峰(ヲ)、ロは助詞、チは霊、霊力を意味しています(ヲを尾と解して、尾が長い大蛇とする説もあります)。蛇にはまたミヅチというものがおり、これは「水つ霊」を表しています。蛇は水の精霊で、水田耕作を主な生業とする日本の人々にとっては、むしろ祭礼の対象であったと考えられます。クシナダヒメももともとは、ヲロチに仕える巫女であり、出雲神話が朝廷神話となるに際して、土地の神ヲロチが悪神となり、巫女クシナダヒメはそのヲロチにさらわれる存在へと変化していったという説もあります(ヤマタノヲロチは水害の象徴であり、スサノヲがそれを平らげた英雄神とする説もあります)。
 また、三種の神器として知られる天叢雲剣(草薙剣)がこのヤマタノヲロチの尾から出てきたことから、ヤマタノヲロチは肥の河(※2)の象徴であり、製鉄神話と関連があるという説もあります。
 古代日本において、蛇は神聖な生き物と考えられていました。それは、蛇が脱皮することから、蛇が再生、不老不死の象徴とされていたことに由来しているようです。
 日本において蛇が邪悪なものと見なされている例は意外と少ないようで(外国では蛇は善悪両方の面を持ち合わせていることが多いようです)、蝮の古名であるハミは、カミ(神)に由来するという考えもあります(この説では、古代ではK音とH音が交替することがあったため、kamiがhamiに由来しているのではないかとしています。参考:角林文雄『アマテラスの原風景 原始日本の呪術と信仰』塙書房、2003年)。

 余談ですが、ヤマタノヲロチというと頭の八つある大蛇として描かれます。しかし、ヤマタノヲロチの説明については、『古事記』に「身一有八頭八尾亦其身生蘿檜榲其長度谿八谷峡八尾……」とある一方で、『日本書紀』には「頭尾各有八岐」とあります。『日本書紀』にあるように、頭と尾に八つ分かれ目があるなら「八俣」の名は相応しいですが、『古事記』にあるように「八頭八尾」だと、頭と尾の分かれ目は七つなければなりませんので、本来は数が多いという意味での「八」(「八百万」の「八」などと同じ用法)を実際の数に当てはめようとした結果、伝によって違いが生じたのかも知れません。このヤマタノヲロチに関係する一連の神話には、非常に多く「八」という数字が用いられています(クシナダヒメが八人姉妹の末娘である(実数の八ではないともされています)、ヤマタノヲロチを酔わせるために用いた八塩折酒、スサノヲが詠んだ八雲立つ出雲……の歌など)。
 古代日本では「4(yö)」(数量無限を意味する「愈(イヨ)」と同じ音)が最大数であったと考えられていますが、yö の母音交替形 ya が登場し、これが無限・多数を表す極限数に用いられるようになったのではないかとされています(「八百万」などの語の例にもあります)。

※1……「赤加賀智(紀では「赤酸醤」)」とは釈紀に「是今保々都岐者也(これは今でいうほほずき(ほおずき)のことである)」とあります。
※2……簸川。川上でスサノヲがヤマタノヲロチを退治したとされる川で、島根県の斐伊川がこの川のことではないかといわれています。
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