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春の読書週間

 昨年度は何かと忙しく、文芸小説を読む気力が湧いてきませんでしたので、今年度は開始と同時に文芸物を読みました。
 今月上旬の記事にも書きましたが、京極夏彦先生の「百鬼夜行シリーズ」(『鉄鼠の檻』『塗仏の宴 宴の始末』)と、「巷説百物語シリーズ」(『巷説百物語』『後巷説百物語』)を読みました。
 そのうち、『後巷説百物語』「赤えいの魚」で、舞台設定が男鹿半島の「戎島」で、民俗学のことを丹念に織り込みながら物語を綴られているのだと改めて感嘆しました。他の作品もそうなのでしょうが、私の中ではとりわけいわゆる「まろうど神」の存在が大きいもので。
 というのも、昨年亡くなられた民俗学者の谷川健一氏が、男鹿は「海」に対する「くが」からきており、海からのまろうど神が訪問する土地としてその地名がつけられているのではないかと著書の中で書かれていたのです。男鹿半島といえば「なまはげ」で有名ですが、ほんらい小正月に訪れるこの神もまた、まろうど神なのではないかとも書かれていました。
 それに加えて、『古事記』『日本書紀』に登場する蛭子(ひるこ)と漂着物を指す「えびす」、七福神にも数えられる恵比寿様。舞台設定が巧みで素晴らしい。
 私が民俗学に興味を持ったきっかけが、『古事記』『日本書紀』を専攻している過程で、柳田国男・折口信夫・南方熊楠、そして谷川健一の著作を読んだことにありましたので、そこで読んだことが小説の中に登場してくるとなお面白いですね。とはいえ、男鹿半島には、実際には行ったことがないので、ぜひ一度行ってみたいと思っています。
 逆に、頻繁に行ったことのある白樺湖が登場する『陰摩羅鬼の瑕』は近くの図書館にないので、未見だったりします。
 ちなみに、「百鬼夜行シリーズ」も「巷説百物語」シリーズも、作品が妖怪の名を冠しているところから、おどろおどろしいイメージが湧いてきますが、読了後に絶望感などはとくに感じないです。とくに「巷説百物語シリーズ」は、人間の持つちょっとした弱さ、浅はかさが身につまされて、ほろりとしてしまう作品が多いです。とくに(以前読んだ)『西巷説百物語』はそういう作品が多かったかな、という印象でした。

 そのほか、最近話題の本? で、坂木司先生の『和菓子のアン』を読みました。和菓子と、日常のちょっとした謎をからめているのが面白いです。日本人が四季の移ろいを愛し、また物の名づけにさまざまな意図を込めているのが分かって面白いです。ぼたもち(おはぎ)の説明が面白い。読むと和菓子を食べたくなります!
 同じ作者で、同じ世界観の作品『切れない糸』も面白かったです。『和菓子のアン』は、食べることが好きな主人公が、デパ地下の和菓子屋さんでアルバイトをする、という設定ですが、『切れない糸』は、商店街のクリーニング屋さんを継いだ主人公のお話。主人公がクリーニング屋さんであるにもかかわらず、こちらの作品にも食べ物がたくさん出てきて、お腹が空きます……。
 どちらの作品も、テンポよく読めて、読んだ後に心が温かくなる。そんな作品でした。

 あとは、以前好きだった(今も面白くて好きなのですが)宮部みゆき先生の本。面白かったことは覚えているのですが、細かい内容は忘れてしまっているので、改めて読むと面白さもまたひとしお。こちらも、人間であれば誰もが持つようなちょっとした弱さ、脆さをたくみに描いている作品が多いです。
 短編集ですと、『ステップファザー・ステップ』、最近ドラマが放映されたらしい『淋しい狩人』、長編『パーフェクト・ブルー』の続編である『心とろかすような』が我が家の人気作品です。個人的には、文春文庫『人質カノン』所収の「八月の雪」が、静かに、でも力強く読者に語りかけてくる作品で、好きです。
 長編だと『魔術はささやく』『蒲生邸事件』。この2作品に出てきた言葉に励まされることが何度かありました。大作『模倣犯』も面白いのですが、読後とてもやりきれない気分になります。『火車』、『理由』なども、わりとそのような読後感を味わいました。
 それと、「ぼんくら」シリーズも面白いです。時代劇はあまり読まないのですが、このシリーズを読んでいろいろ手を出してみようかな、と思いました。
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