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花街あれこれ⑦(江戸吉原七不思議)

 昨年末に映画版の『吉原炎上』がTV放送されていましたね。内容が過激そうで、私はまだ観たことがないのですが……。
 弘文堂『日本風俗史事典』によれば、吉原は1761(宝暦11)年に太夫・格子がいなくなり、太夫・格子に次ぐ散茶女郎が太夫格になったものを「花魁」と呼んだといいます。東京堂出版『女性語辞典』によれば、「さんちゃ」の呼称は、従来先住した太夫・格子が唱えた蔑称で、「さんちゃ」は床に入っても客を「ふり出さない」ことからつけた名だそうですが……。
 「おいらん」の語源は妹分の女郎や禿が姉女郎を指して「おいら(己等)が」(または「おいらのところのあねさん」)といって呼んだのに基づくとされていますが、「花魁」について「太夫」と書いてある本や、「部屋持以上の遊女」と書いてある本があり(また単に遊女・女郎を指す場合もあるようです)、混同があったようです。北村鮭彦『お江戸吉原ものしり帖』(新潮文庫)によれば、「呼出、昼三、附回の三階級の遊女が花魁と呼ばれた」とあります(吉原で太夫職・格子職が消滅して以後は、呼出が最上位)。
 京嶋原では太夫職が消滅しなかったので「太夫道中」ですが、江戸吉原では宝暦年間に太夫職・格子職が消滅してしまったので、それより後はやはり「花魁道中」が正しいということになるのでしょうか。

 客の質的低下ももたらされ、時代が下るにつれて「悪所」となっていった吉原。それでも江戸時代の流行の最先端、ファッションリーダーであり続けました。
 人びともそんな吉原に興味があったようで、「江戸吉原七不思議」なるものがあります。
 この七不思議、怪奇的な意味合いの「七不思議」ではなく、駄洒落や滑稽なものがほとんどです。

 大門あれど玄関なし ①
 茶屋あれど茶は売らず ②
 角町あれど中にある ③
 揚屋あれど揚げはなし ④
 やり手といえど取るばかり ⑤
 年寄りでも若い衆 ⑥
 河岸あれど魚なし ⑦
 水道あれど水はなし ⑧

 ①「大門(おおもん)」とは吉原大門のこと。大門は建物の門ではなく、従って玄関もないという駄洒落。
 ②茶屋とは非公認の売春所であり、茶屋とはいうものの茶の店ではないという駄洒落。
 ③角(すみ)町と、端の意味の「隅(すみ)」を引っかけて、「名前は隅なのに、中にある」という駄洒落。
 ④揚屋は遊女と遊興するための施設で、揚げ物を売る店ではないという駄洒落。
 ⑤遣り手とは、妓楼のことを取り仕切る老婆のこと。何かを「やる」人ではないという皮肉。
 ⑥妓楼で働く男性従業員は、年齢に関係なくみな「若い衆」と呼ばれたことへの駄洒落。
 ⑦河岸とは、吉原周囲のお歯黒溝に面した格式の低い遊女屋「河岸見世」のことで、魚河岸を指すわけではないという駄洒落。現在も飲食・遊興する場所は特に「河岸」などと呼ばれます。
 ⑧当時は吉原の突き当たり・町はずれに水道尻という俗称があったようですが、水道は通っていないという駄洒落。

 ちなみに、江戸吉原と双璧をなす京嶋原にも「京嶋原七不思議」があります。

 入り口を出口といい ①
 堂もないのに「どうすじ」という ②
 下へ行くのを上之町 ③
 上へ行くのを下之町 ④
 橋もないのに端女郎 ⑤
 社もないのに天神様 ⑥
 語りもせんのに太夫さん ⑦

 ①③④入口を出口と呼んだのは、嶋原の入口(嶋原大門)が鬼門方向にあり、縁起が悪いとされたため。「下へ行くのを上之町、上へ行くのを下之町」も、入口が鬼門方向にあったことから、廓内で南北東西を逆にしたことにちなみます。
 ②堂筋は嶋原の目抜き通り。お堂はないが堂筋という名前という駄洒落。
 ⑤端女郎は嶋原であまり低くない位の女性。橋があるわけでもないのに「はし」女郎という駄洒落。
 ⑥天神は太夫に次ぐ上級位の妓女。揚げ代が銀25匁だったので、北野天神の縁日(25日)にかけてこう呼ばれたともいわれます。神様である天神様と、天神職の女性を引っかけた駄洒落。
 ⑦太夫は嶋原最高位の妓女ですが、浄瑠璃で語る人も指すので、それと引っかけた駄洒落。
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