FC2ブログ

行間を読む?・⑦

 少し前のことですが、需要(というより、必要)があり、「校正技能検定〈上級〉」という資格を取得しました(民間資格ですが……)。
 そのことと関連して、一昨年、辞書編集の様子を描写した『舟を編む』が本屋大賞に選ばれたり、『校閲ガール』という本が出されたりと、編集や校正などが少し注目されていましたが、校正と校閲を間違えられたり、校正を「間違い探し」と言われたり、広く浅く注目されるのも善し悪しだなと思ったものです……。

 かつては手書き原稿が大半でしたので、作者が手書きした原稿を印刷会社で入力してもらう(活版時代は、原稿に従って活字を拾ってもらう)ために生じる入力ミス(活字の入れ間違い)が多かったのです。
 そのため、校正とは、作者の書いた原稿と、実際に印刷された試し刷り(ゲラ)とを一字一字引き合わせて、原稿と違う部分を探す作業(「引き合わせ校正」)が必要でした。
 ただし現在では手書き原稿はほとんどなく、すでにワープロ機能をもつソフトで入力されたデータが大半なので、引き合わせる元の原稿が作者の頭の中にしかありません。そこで、作者が入力ミスをしていないか、用字・用語の使い分けを間違っていないか、また印刷会社が出版社の指定を間違っていないかどうかを調べる「素読み校正」が、現在の校正の主な作業となっています。
 「引き合わせ校正」が原稿に忠実に赤字(訂正)を入れ、明らかに作者の間違いと思われる箇所には鉛筆で疑問を提出しておくのに対し、「素読み校正」は原稿がありませんので(データをプリントアウトし、出版社がそのうえに指定を入れた原稿はあります)、こちらは「校閲」に近い作業といえます。
 老舗出版社では用字・用語の使い分けにも決まりがあり(出版社ごとの決まりを「ハウスルール」などと呼びます)、括弧の下げ方、ふりがなの付け方にも決まりがあるのですが、新しい出版社はわりとめちゃめちゃだそうです(とはいえ、私はすべての出版社の本を目にしたわけではないので、実際にそうであるのかどうかは何ともいえませんが)。
 ハウスルールは基本的には秘密のようですが、講談社だけはハウスルールをまとめた本を出版しています(『日本語の正しい表記と用語の辞典』)。
日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版
(2013/04/24)
講談社校閲局

商品詳細を見る

 新聞ではかなり用語を厳密に使い分けていて、参考になります。
記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集
(2010/10/27)
一般社団法人 共同通信社 編著

商品詳細を見る

 ちなみに、括弧の下げ方やふりがなの付け方は「組版ルール」と呼ばれています。括弧類や句読点は「約物(やくもの)」と呼ぶのですが、おもにこれらの処理方法に関するきまりです。
 一番分かりやすいのは行頭の括弧類と、前の行から文章が続いてきた次の行の頭にくる括弧の処理方法。
0608.png
 縦書き(縦組)の本は、基本的にこの3種類です。横書き(横組)の本は、一番右側の組方しかありません(本来は)。一番右側の組方が一番昔からある方式で、岩波ルールなどと呼ばれているそうです。一番左側の組方は、少し? 前の本の組方です(機械の処理方法の関係で、一番左側の方法しかできなかったそうです)。ある程度新しい岩波新書などは、一番右の方法で処理されているはず。
 私もいわゆる「岩波ルール」の校正を教わりましたが、今一番 この「組版ルール」が美しいのは新潮社だそうで、新潮社はこの「組版ルール」のデータを公開しています(このページからダウンロードできます→http://www.adobe.com/jp/jos/designmagazine/howto.html。ただし、使用するには本を組版するためのInDesignというアプリケーションソフトが必要ですが)。

 ……何だかいろいろ詰め込みすぎて、長くなってしまいました。
 本の内容も大切ですが、誤字脱字、用語の使い分け、組版ルールなど、そういう部分もきっちりしていてこその「良い本」だなあと思っています。
 ……ただしそういう目でばかり見ていると、雑誌は組版ルールがずさん過ぎて、本当に読めなくなります……。
スポンサーサイト



コメント

 

コメント

 
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

Powered by FC2 Blog

Copyright © コトノハナ。@備忘録 All Rights Reserved.