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神話についての考察①

 私は『古事記』『日本書紀』や、世界各地の神話が好きで、そのことについてWebサイトで取り扱うほどですが、神話が好きな理由の根本には、「小説や漫画、ゲームは、神話に典拠があるものが多い」ことがあると思います。これから神話について考察しようというのに、高尚な理由ではなく、何とも通俗的な動機で恐縮ですが……。
 ただ、神話が好きな理由について、「元ネタ探しが面白くて……」と正直に白状したところ、とある方から、「神話には、人間が、この世界をどのようにとらえているかが表れている」と教えられました。さらに、「神話とは、人間が世界を説明するために作ったもの」だとも言われました。
 それより前に、何気なく図書館で手に取った『ことばの古代生活誌』(河出書房新社、1989年)にも、同じことが書かれていて、改めて驚嘆したのを覚えています(以下、『ことばの古代生活誌』からの抜粋)。

 なぜ人は神を幻想するのだろうか。それは、人は社会をなさねば生きていけないし、また子孫を存続していくことができるにもかかわらず、個体はやはり一人ひとり別の存在であるから、人が社会をなしているなかにさまざまの矛盾を抱えざるをえないからだ。その矛盾を克服するために、神という絶対的なものを共同体は幻想し、そこに社会の根拠を托し、個体が従わねばならない状態を作り上げるのである。(中略)
 生活のあらゆる事物の起源も、神の世に幻想された。なぜなら子の生産がなぜ可能なのか、人はどこからやって来るのか、家はどうして建てられるのかなど、生活を成り立たせることは、究極的には説明できないからだ。説明不可能なことは、神の世という論理を超えた世界に外化され、幻想された。(中略)そして当然のことながら、祭りの起源も神の世に幻想された。……

 この本は、このほかにも、かつて社会の最も基本的な単位であった「里」や「村」についての語義解釈(始祖の神がよい場所を求めてさすらったという意味で、「里」は、霊威の満ち満ちている(=サ)所(=ト)である。だからこそその子孫はわざわざそこに集落を立てて暮らしている。「村」は「群れ」からきており、共同で作業することの能率のよさ、みんなでいることの安心感を表す)など、数々の「ことば」から、古代の人びとの考え方を解釈しています。
 やまとことばに興味のある方にはとてもおすすめの本なのですが、すで絶版になっているようで、私は古本で購入しました。この古本もかつては図書館の蔵書だったらしく、本の背に分類番号が、裏表紙に「新座市立図書館」「リサイクル資料」などのシールが貼ってあったのですが……。
 埼玉県新座市の図書館の本が、巡り巡って私の手元に届いたことにもいくらかの感慨を感じますけれども、この本を読んで、神話というものが何なのか、改めて考えさせられました。
 端的にいうならば、それこそ「神話とは、人間が世界を説明するために作ったもの」であり、その、いわば共同幻想が集落内で共有されることで社会(集落、村)は成り立っていた。その集落に暮らす人びとはみな、村を立てた始祖神の末裔で、だから同じ神話を信じる人びとはみな、始祖を同じくする共同体という意識をもっていた。
 神話イコール宗教ではありませんが、たいてい神話と宗教は結びついていますし、宗教で禁じられていること(有名なものに「十戒」があります)は、本来的には共同体を維持していくうえで必要なきまりごとだったのだといえるでしょう。
 神話のない民族(国)はない、とか、物語の極致は神話である、とかいう言葉を聞きますけれども、日本の神話(『古事記』『日本書紀』は、宮廷神話としての性格が強く、必ずしも日本人の精神に根付いた神話とはいえないかもしれませんが)を読み解くことは、私たちの祖先が世界をどのようにとらえ、何をよりどころとしてきたか、という、いわば「心」をひも解くということであり、またその神話を伝えるものが「ことば」であり、ことばを永続的にとどめおくために用いられたのが「文字」である。神話ではなく、「ことば」(単語、語彙)ひとつひとつにも、命名者の意図・価値観が反映され、何らかの物語がある。
 そう考えると、日本語(ことば、文字)や、神話を勉強していくことは、人の心を学んでいくことでもあります。私たちの使うことばや文字が、形を変えこそすれ、はるか神代の昔から続いていると思うと、自分自身と、自分自身を取り巻く歴史について、厳粛に受け止め、考えることがあります。
 元ネタ探しも、肯定的にとらえれば、自分の精神修養のために役に立つことなのかもしれませんね。

 古橋信孝編『ことばの古代生活誌』(河出書房新社、1989年)については こちら(Amazonでの商品紹介ページ)
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